科目名 | 証券市場論 |
担当者 | 井村 進哉 |
単位数 | 4単位 |
配当年次 | 3年 |
科目区分 | 選択必修 |
実地学期 | 通年 |
授業形態 | 講義 |
講義概要 | 日本経済は、依然として深刻な不況下にある。この不況は、1990年以来の株価と不動産価格の下落を引き金にして生じており、これらが証券業や不動産業の不振にとどまらず、金融システム全体の機能を低下させ、これがまた不況からの脱出を困難にしている点に特徴がある。 中でも証券市場は、80年代後半のバブルの形成・膨張期に、その本来の役割から逸脱して著しく投機化した。本来証券市場は、社会に散在する資金を直接に動員、集中し、この資金を巨額で長期・固定的な投資資金に転換する機能をもっている。ところが80年代後半の日本の証券市場は、低金利下で異常な株価成長を生み出した。また企業や金融機関が株式などを通じて低コストで調達した資金は、生産活動に使われるのではなく、値上がり益(キャピタル・ゲイン)だけを期待して再び株式や土地に運用される状況が生じた。まさに証券市場の投機化がバブル膨張の主役となったのである。 その意味で今日の「バブル不況」ほど、証券市場が投機化がなぜ異常なまでに進展したのか、またその崩壊が実態経済にどのような影響を及ぼしているのか、さらには証券市場本来の役割を回復させるための政策は何か等々、証券市場と金融システムをめぐる問題を鋭く提起している時期はないように思われる。しかしこうした問題に答えるためには、少なくとも以上のような証券市場と金融システムに関する基礎的な理解が不可欠である。 そこで本年度の講義では、まず前半でマクロ的な(巨視的な)視点から証券市場の経済的な機能を概説する。そこではまず証券市場の金融システム全体の中での地位を概観した上で、有価証券を中心とする種々の金融手段の生成論理を明らかにし、これらの経済的機能と運動の特質を経済主体との関連で位置づける。 続いて後半では、戦後日本の証券市場をとりあげ、そこにおける株価形成メカニズムの特質を検討した上で、バブルを生み出した株式市場の変貌の特質を構造的、機構的に明らかにする。また今日の金融システム不安のもとで実施され、検討されている金融・証券政策を取りあげ、その有効性と問題点を明らかにすることにしたい。 |
評価方法 | 毎回提出してもらう出席カード兼簡易レポート(講義での疑問点・感想などを記入する)と前期・後期2回の試験などに基づいて総合的に評価する。 |
教科書・参考書等 | 前期・後期ともに、市販の教科書を使わず、講義レジュメ・講義資料を適宜配布する。 役に立つと思われる参考書は下記の通りである。なお適宜参考書を指示する。 参考書:竹村脩一・玉野井昌夫編『金融経済論[新版]』(有斐閣、定価3,200円) :渋谷博史・北條裕雄・井村進哉編『日米金融規制の再検討』 (日本経済評論社、3,605円) :東京証券取引所『Fact Book 2000 東証要覧』 (東京証券取引所調査部、定価900円前後) |
その他(履修条件、 履修上の注意事項) | 証券市場論では、現実の日本の証券市場、株式市場を取り上げるので、日常的に新聞記事を読む習慣を付けて欲しい。また毎回提出の簡易レポートに書かれた履修者の問題意識、学習成果を成績評価に重点的に反映させるので、出席が肝要である。 |